キレイな場所だけで人は生きられるか

カップが並んでいる。メニューから選べるコーヒーは豊富で味の解説も丁寧。地下にある落ち着いたこの喫茶店はぶな。

【ぶな】

ぶな
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 カップも選べて、広い。作業までできるかどうかは忘れたが、落ち着くにはちょうどいい。来ているお客さんも品のあるしっとりした感じだ。静かな時間を穏やかに過ごすにはうってつけの店だ。

渇き

こういう所で気を落ち着かせて現実をやり過ごす。そうして毎日を生きていく。何の問題もない。周りの人と遜色のない姿をして、ただ生きていけばそれでいい。平和に生活できる。なのにどこか満たされない。それどころか落ち着かなくなってくる。世間から取り残されるような孤独感と追われるような焦燥感に襲われる。

【ニコラシカ】

 タコスを食べながらビールを飲み、夜の商店街を駆ける自転車を眺める。この人たちはどこから来て、どこに向かうんだろう。きっといる場所もあって、ゴールも決まっているのだろう。こうやって漂って、タコスに舌鼓を打って、普段飲まない種類のビールで憂さを紛らわしてる自分とは違う。しかし、この時ばかりは孤独も焦りもない。ただそこにいるってことだけを感じる。テイクアウトもあって、家族でも楽しめる。そんな家族はいないけど。

【JOE】

人の歌声が思考を乱していく。店員と客の会話の盗み聞きが思考の隙間を埋めていく。ぼんやり眺めるスマホの情報が正常な思考を埋めて雑音だらけにしていく。もう心地よさもないけど、虚無の中で止まった点でいる感覚になる。取り残される焦りもないし、人がいるんで孤独は感じない。

もし、こうやって独りすら許されなかったらどこにもいられなかっただろう。存在が許されてるかはわからないが否定もされないのはありがたい。