(投稿者:佐藤 梨)
通うきっかけ
mojaに通い始めたきっかけは、友人から「土曜の昼に江古田のmojaって小さなバーで読書会をしているから来ない?」と誘われたことだった。店に初めて行ったとき、店内のソファで常連さんが二人寝てて面食らったのを憶えている。しかも、自分の後に入ってきた他のお客さんはそれを咎めることもなく、「まぁそういうこともある」と言わんばかりに平然としていたのが印象的だった。何度か通ううちに雰囲気がつかめてきた。イベントバーって形態だけど、割と地元の人が来てること。カクテルを注文するとでっかいコップにお酒多めで作ってくれること。他にお客さんがいなかったら店にあるテレビでyoutubeを適当に見てていいこと。要は、この店は大学の部室みたいなところなんだと思う。その雰囲気を理解したころには僕も店に馴染んできていて、店で酔いつぶれていつの間にか近くに住んでる常連さんの家で寝てたりした。
色んな江古田を見つけて
僕にとって、江古田とはmojaに続く道のことだ。江古田駅から降りて新桜台駅に向かう直線の道、これが僕にとっての江古田だった。ただ、mojaに何度も通うにつれ、店に行くついでだったり、店で知り合った人と行ったりした、moja以外の色んな江古田が見つかるようになった。深夜営業のラーメン屋、レトロゲームが揃う喫茶店、品揃えが微妙なブックオフ、イベントで売られる綿菓子、謎のご当地ヒーロー。どうやら江古田には、mojaに続く直線以外にも、いろんな場所があるようだ。そうこうしているうちに、なんと僕は江古田の近くに引っ越してきてしまった。職場までそう遠くなく、何よりmojaが近いことが決め手になった。僕はすっかりmojaという店のコミュニティに肩まで浸かっている。
思い出になるまで
mojaの店長のフゥムさんが、前に酒は思い出で飲むものだって言ってた。本当にそうだと思う。鏡月のロックを飲むと大学時代に友達とよく回し飲みをしたのを思い出すし、濃いめのハイボールを飲むと、これまた学生時代に紛れ込んでた社会人コミュニティでよく奢ってもらったことを思い出す。ジントニックを飲むと、社会人になって通い始めたバーでよく飲んだことを思い出す。飲んだ場所も一緒に思い出す。鏡月ロックなら、八王子の安アパート。濃いめハイボールなら、新宿三丁目の呑者家。ジントニックなら、歌舞伎町のやどりば。江古田で思い出すことになるのは、たぶんmojaのテキーラコークだと思う。別にテキーラがめちゃくちゃ好きとかじゃないけど、テキーラは店の冷蔵庫の中にあることが多いから、とりあえずで注文する。フゥムさんはでっかいコップにテキーラ濃いめでテキーラコークを作ってくれる。
いつかmojaも思い出になるのだと思う。そして、テキーラコークを飲むとmojaと江古田を思い出すんだと思う。mojaが思い出になるその日まで、僕はテキーラコークを店で飲み続ける。でも、それはまだまだ先の話であってほしい。それまでにはもう少し江古田を知っておくから。