高橋かずひろの考える未来 「普通の人生」が消えた世界

この記事は、2022春 マニアフェスタ “高橋かずひろ様”の寄稿記事です。

突然ですが読者の方はリアルタイムのテレビの記憶ってどのくらいありますか?
Z世代(1990 年代生まれ)の私は 2000 年代のテレビ(特にお笑い)はよく見たな〜って記憶にあ
ります。
2010 年代になったらニュース以外のテレビはあまり見なくなった感じがしています。

おもしろいから見るテレビから、暇つぶしのために見るテレビになり、暇つぶしのテレビも見なくなってきた感じがしている。

人がテレビを見る理由は大きく二つに分けられると思っています。一つは娯楽のため、
もう一つは世の中の流れに乗るため。

娯楽のためのテレビの場合、Youtube や AbemaTV やケーブルテレビで「過去のおもしろい映画やテレビの再放送」を流してくれるので「わざわざ今の映像を娯楽のために見る」必要が無くなっていったのかなあと思っている。昔の映像の方が元気があって楽しい。

この文章を書いている私、高橋かずひろは現在 27 歳、娯楽のためだけだとストックされた映画を繰り返し見ているだけになりやすい。

世の中の流れに乗るためのテレビも、スマホが登場してから「テレビよりも SNS で友人が何を考えているか?」にシフトしていってしまって、SNS の登場前は「テレビ=世の中」だったのが、SNS の登場後は「テレビ=年寄りの意見」くらいにグレードダウンした感がある。

「誰かと一緒に見る。」ことを想定しなくなると同じ映像でもとたんにつまらなくなる。お笑いの再放送を見ても「あれ?なんでこんなお笑いを見て昔は笑っていたんだろう?」と考えてしまったりもする。

テレビを見なくても結構快適に暮らせてしまうのだ。困るのは知り合いに「テレビに映ったから見てくれ。」と言われたときに見れないことくらい。

「最近の若い人がテレビを見ない。」と言われてかれこれ 5 年ぐらい過ぎている。「家にテレビがない。」と堂々としゃべっても貧乏扱いされなくなった。若い人の常識を作っていく存在であるテレビの影響力は確実に落ちている。

テレビを見なくなったことに加えて他人と会う機会が無くなっていくと孤独感が増えていく。
普通に働いている人もリモートワークが増えて雑談する機会が減ったり、大学教育もコロナ禍でオンライン授業になって学生同士が直接会う機会が減ると「この大学にはこんな感じの人が通っている。」という言語にしにくい情報を得る機会が無くなっていく。
勉強ももちろん大事だと思うが、部活やサークルのような「同世代の横のつながり」がない状態で就活に入っていく大学生に対して「大変な思いをして就活していたコロナ前の大学生よりも大変だろうなあ。」というおせっかい心がわいてしまう。

他人の意見を知る手段としてテレビの権威が落ちてコロナ禍で人と人が直接会う機会が無くなると口コミの力も減ってしまう。結局、現代人にとって他人の意見を知るツールはインターネットに移った。
そのネットの世界も google のような少数の巨大企業が情報の集まる部分、一番金になる部分を押さえているが、近い将来インターネットも中央集権型のWEB2.0 から分散型の WEB3.0 にシフトしていくらしい。
今までは「Youtube の運営に目をつけられたらアカウントを停止されて動画が出せない。」、「サイトを管理する AI に気に入られる情報発信をしないといけない。」みたいなことを考えていたけど、これからは「集団A では嫌われているけど集団 B では好かれている。」みたいな感じの意見もどんどん発信されていくようになる。

情報発信は「大集団をコントロールするもの」から「内輪のノリの小さな集団でやったりとったりするもの」に変化していく流れは当分続くのかなあと思っている。

メディアがテレビやラジオや新聞しかなかった時代は、コントロールする側が発信手段を独占していたけど、インターネットが便利になるとコントロールされる側も発信手段を持つようになって対抗できるようになったし、近い将来情報の関所のような巨大 IT 企業の影響力が弱まるとさらに過激な意見も便所の落書きとしてではなくまっとうな主張として世に出てくるそんな世になるかなと予測してみる。

これからは小規模コミュニティが乱立して多様な価値観が入り乱れる時代になりそうだ。
多様な集団が入り乱れる分、集団同士をまとめて何かするというのは難易度がめちゃくちゃ高くなる。
一般的にこんな生き方が正解、みたいな常識もなくなっていきそうでちょっとは生きやすくなるかもしれない。
正解が無くなった分、さらに人々は自由に動き回るようになる。目標を見失って苦しむ人も出るだろうけど。
人がそれぞれの意思でバラバラになることを「社会の分断」と言う人もいるだろうし「多様性がある」という人も出るだろう。

くっついたり分裂したりを繰り返すまとまらない集団で生きることが未来の必須科目ということでこの文章をまとめたい。

高橋かずひろ
1995 年生まれ、企画屋など(PR とかライティングとかデザインとかもやります。)
Twitter@kazuhirosanto
コミュニティに新しいものを持ち込む人、思考パターンは「何かやりたい」
出没場所、谷中研究所、謎フード公安委員会
恋愛リアリティー映画「マジ恋」のプロデューサーもしている。この企画を広めるために宣伝スキルを酷使する。おもしろそうな企画ありましたら勉強に行きます。